Sanctus & Benedictus


Sanctus


Sanctus, Sanctus, Sanctus
Dominus Deus Sabaoth.
Pleni sunt Coeli et terra gloria tua.
Hosanna in excelsis.

聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、
万軍の神なる主は。
天と地は汝の栄光に満ちている。
天のいと高きところに万歳。

Benedictus


Benedictus qui venit in nomine Domini.
Hosanna in excelsis.

主の名によりて来たるものは祝福された。
天のいと高きところに万歳。

(※「ラテン語宗教曲、単語の意味と日本語訳」などを参考。)



SanctusとBenedictusは、ミサの中で、「聖体変化」および「聖体拝領」の際に演奏されるものです。
司祭が、最後の晩餐でイエスが唱えた言葉を繰り返すことで、パン(ホスチアと呼ばれる薄いウエハース)とワインが、イエスの体と血に変わるとされています。(聖体変化)
そして信徒は、そのホスチスとワイン(一般的にはホスチアだけ)を拝領します。(聖体拝領)
これらは、キリスト教の礼拝儀式の核とも呼べるものです。

さて、歌詞の内容と演奏する際の表現を考えてみます。

まずSanctusですが、神の神聖さに感動する内容となっています。
「Dominus Deus Sabaoth」は、Dominus(主)、Deus(神)、Sabaoth(万軍の)で、「万軍の神なる主」の神聖さに感動して「聖なるかな」と讃えているわけです。
後半の、「Pleni sunt Coeli et terra gloria tua」は、Pleni(豊富な)、sunt(be=である)、Coeli(天) et(and)、terra(地)、gloria(栄光)、tua(あなたの)であり、「天と地は汝の栄光に満ちている」という意味です。
これだけの短い歌詞の中に、重要なラテン語が盛りだくさんです。
Sanctus の歌詞内容を理解するだけで、他の曲の歌詞も少し分かるのではないかと思います。

前半部分で各パートがSanctusという語句を繰り返し歌っていきますが、これらはすべて下降形になっています。
これはSanctusという単語自体がもつイントネーションも関係しているはずですが、ここで注意するべきなのは、自分がSanctusという言葉を歌いだした後には、必ず他のパートがSanctusと歌い出す点です。
入りの部分が最も目立った後は他パートに譲って、自分は曲全体のハーモニーの中に溶け込ます意識が重要なのではないでしょうか。
アルト、テナー、バス、ソプラノの順でSanctusと入っていき、声部が増えるごとに全体としてのボリュームも少しずつ大きくなってくるわけですが、そのピークは7小節目にソプラノ、テナー、バスの3声で同時に入るSanctusとなります。
この3声はそのことを意識して一体感を持って揃える必要があります。

「Dominus Deus Sabaoth」に入ってからは、やはり他パートの入りにきちんと耳を澄ませるとともに、流れゆくハーモニーにもきちんと気を配る必要があります。
各パートの旋律が比較的に単調なところでは、お客さんの耳は各パート動きにはあまりいかず、全体としてのハーモニーを体感することになります。 ですから、細かいピッチのずれもかなり目立ってしまうのです。
またこの部分では、9小節目でアルトとバスが、14小節目でソプラノとバスがそれぞれ同じタイミングで入ります。
当然2声でそろえなければいけないのですが、9小節目はそれまでの「Sanctus」からの切り替えポイントで雰囲気も少し変わるところであり、14小節目は「Dominus Deus Sabaoth」としては最も目立つところでお客さんからも聞き取りやすいところです。
大きなフレーズの中で、今自分が歌っている部分はどういう意味合いを持っているのかを考えながら歌うと、曲の表情が豊かになるのではないでしょうか。

その後「Pleni sunt Coeli et terra gloria tua」の部分は、ソプラノ、アルトが「Dominus Deus Sabaoth」からの繋ぎの役割を果たしたあと(新たなフレーズの入りですから、歌詞が変わったことが伝わるように歌うことも大切かと)、18小節目にソプラノ、テナー、バスの3声が同時に入ります。
「天と地には満ち溢れている」というメッセージがはっきりと伝わるように、ここも一体感を意識しながらたっぷりと歌う必要があるかと思います。
「Gloria tua」の部分は、すでにみんなが意識しているように、他パートと3度のハーモニーで動く間隔をきちんと保ちながらも、ぎこちなくならずに流れ行くことが大切かと思います。

「Hosanna in excelsis」に入って、曲調がガラッと変わりますよね。
全体として重要なのは、Ho-san-naの3音節をはっきりと歌うとともに、上昇の階段を滑らかに歌うことでしょうか。
それとともに、38小節目のソプラノ以外は、Hosannaは必ず他パートと一緒に入ります。
アルトとバス(40小節目)、ソプラノとテナー(42小節目)で入る部分は、もう少し一体感がほしいですよね。
また、最後の和音に向かって失速せずにたっぷりと歌うことで、「おぉー」という印象を与えられるのではないかと思います(語彙が貧相ですみません。。)


うわー、Sanctusだけで相当長くなってしまった…。
だけど、このままBenedictusもいってしまいます。


Benedictus の歌詞はさらに短いです。
Hosannaの部分を除けば、「Benedictus qui venit in nomine Domini」だけ。
Benedictus(祝福された)、qui(who=関係代名詞)、venit(来る)、 in(in?=前置詞)、nomine(名前)、Domini(主の)で、「主の名によりて来たるものは祝福された」となります。
キリストがロバに乗ってエルサレムに入るときに、群衆が歓迎して叫んだ言葉のようですが、ミサでは、パンとワインの形をとってやってくるキリストを歓迎しています。

前半部分は3声ですね。
多くのミサ曲でBenedictus の前半部分は少ない声部で作曲されていますが、その意図を感じ取って、繊細に密度を濃く歌う必要があるかと思います。
全体として特別に注意するべき部分はありませんが、パート内で拡散しないようにしっかりと1本にまとまり、たっぷりと、しかし音量は大きくならないようなフレージングを心がけることが大切かと思います。
また、「i」と「e」の母音で伸ばす部分がたくさんあります。
きちんとたてに響かせられるように頑張りたいですね。
あとは、典型的なポリフォニーとも呼べる形式ですから、他パートの入りの部分を浮き上がらせるように注意を払うとともに、3声がそれぞれ独立して流れながらも全体としての響きの中に自らを溶け込ませるような意識を持てるといいかもしれません。

後半のHosannaの部分は、Sanctus の歌い方と特に変える点はないようなので割愛します。


…この分では、Credoの解釈とかブログ記事では無理ですね。。
うーん、個人的なこだわりが大きすぎるのですが、せめてミサだけは意味を感じ取りながら歌えたらいいなぁと思っています。
冒頭の対訳の下に貼ったリンク先は、単語ごとの意味も載っているので非常に分かりやすいです。
一度でいいので、歌詞の意味をひとつずつ追っていってもらえると嬉しいです。【K.】